経済学

住宅ローン金利と相関性の高い金利はどのように決まるか?

前回は、住宅ローンは固定か変動か論争を冷ややかに見るという記事を書いた。言っていることはその前の記事と全く変わらない。

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おさらい:住宅ローンの大原則

固定金利か変動金利かで迷ったら?

固定金利と変動金利どちらが良いか?という質問に答えるなら、
繰り返しになるが、原則変動で良い。

住宅ローンの変動金利がどうなるかということについて知りたければ、おおよそ私と同じように考えている、住宅ローン関連サービス会社のリリースがあったので、上のリンク先を参考にしてもらいたい。(上記会社との利害関係はない)

家計管理ができるサラリーマンであれば非常に低い金利で借りられるし、しっかりと蓄財もできるだろうからである。基本的には「繰り上げ返済」をするというのが王道だ。

具体的に言えば10年〜15年程度で返済できるだけの貯蓄もしておきながら、金利動向やライフプランを踏まえてタイミングよく完済するのである。

そうでなく、毎月の家計もローンを返済したらギリギリで35年ローンを使い切ろうとしているならそもそも購入してはならない

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住宅ローンは普通に借金だと考える

借金の大原則だが、金利が高いほど支払利息は大きくなるし、最初に借り入れる元本が大きいほど支払利息は非常に大きくなる。

返済総額を抑えるには、金利はできるだけ小さく、返済はなるべく早くという、これこそ身も蓋もない当たり前の結論である。

変動金利が難しい個人の属性がある

そして、個人の属性というものがある。
変動金利は原則、勤務しているサラリーマンだけの特権である。

個人事業主や創業から年数の浅い中小企業の経営者も不可能ではないが、
業績の安定性に加えて、金融機関担当者の口利きなしで通すのは困難である。

これは伝聞ではなく、実際に私が経験したことである

偉そうに語っているが、私は決して良い戦略とは言えない場当たり的な選択をしたことで、結果としてフラット35が最後の救いとなった。

変動金利が難しい属性の人もいる。
そのような人は通っただけマシ、頑張って完済を目指すだけである。

金利はどのように決まるのか?3つの仮説

今回は経済学、財政学の一分野となっている国債、
そしてその金利について少し専門的な視点から説明できればと思う。

「期間構造に関する仮説」というのは、金利はどのように決まるかということである。

金利はどのように決まるのかという問いに答えるのは難しい。

簡単そうで実は説明が難しい事象について、経済学、そしてファイナンスからどのように説明されているのだろうか。そして金利を予想することは可能だろうか?

結論から言えば、金利を予想することはできない。

学術的にも定まっておらず、大きく3つの仮説が提唱されているに留まる。

つまり、仮説と言っているが実際のところ、将来このどれかが正解だということが分かるというわけではなく、この3つのどれもが影響しているというのが正しいだろう

純粋期待仮説

長期金利が現在と将来における短期金利の期待値の平均に等しくなるとする仮説。

市場分断仮説

債券市場は残存期間別に分断されており、特定の残存期間を持つ債権の利回りはそれらの需給で決まる、とする仮説。

流動性プレミアム仮説

残存期間が長いほど金利に付されるリスク・プレミアムが大きく、より高い金利となるという仮説。

長期で貸すのはリスクがある?

どれも面白く興味深いが、純粋期待仮説が成立するとすれば、例えば10年国債を1回発行するのではなく、1年国債を複数回発行したとしても支払う金利は同じになるだろう。

しかし、実証研究によればそうはなっていない。
つまり、国債においては長期金利には何らかのプレミアムが認められている。

直感的に長期で運用するほうが短期で運用するよりリスクがあると思うだろう。
それは長期で国債を買ってしまったら、その期間に国が破産したら資産が無くなるということだから、短期と比較してより高い金利をつけないと買い手が現れないためである。

住宅ローン金利と金融商品としてのローン

国債という言葉を聞いたことが無いという人はいない。
しかし、「クーポン」を知っている人は少ないかもしれない。

クーポンとは利息である。

債権を発行する際にこのクーポンがついているものは「利付債」、
ついていないものを「割引債」と言う。

住宅ローンとして皆さんが借りたという権利は住宅ローン債権として市場で売られる。
利付債としてローン債権はまた別の金融機関に販売される。

変動金利で借りた人の住宅ローン債権も、フラット35で借りた人の債権も同じである。

あなたの住宅ローンに他の人が投資する?

さて、話はもどって結局の所住宅ローンというのは金融商品である。
あなたが頑張って返す利息というのは他の誰かの運用商品として富に変わっている。

逆に言えば、利息がどのように決まるのかというのは、資金を運用したい人から見てあなたの信用度がどれくらいあるのか、どれくらいの利息であなたに貸したいかというところできまる。

そして、それを手配する金融機関のマージンを上乗せしても商品となるようであれば、初めてローンを組ませることができる。だから、そういった金融機関や投資家にとって、(都合の)良い人かどうかを見極めるのが住宅ローン審査である。

金融機関は属性の良い人達を集めて住宅ローンを組んでもらうことで、それを金融商品として市場で売却することで商売として成り立つ。

ローンをちゃんと返せないような人を沢山混ぜてしまったら、その商品は高い利息を支払わなければ買い手がつかなくなってしまう。

アメリカで発生したサブプライムショックのもととなったサブプライムローンというのは、この安定していない人(属性の低い人)に住宅ローンを貸付け、それらを金融商品として組成する中で質の悪いローンが組み込まれていたことから始まった。

そう、あなたがその質の悪い人でないことを確認するのがローン審査である。

住宅ローンの変動金利と固定金利の利率根拠

さて、話は大きくなったが、住宅ローン金利がどのように決まるのだろうか?

住宅ローンの変動金利に関して言えば、「短期プライムレート」という優良企業向けの基準金利をベースにしている。

つまり、原則的にはこの短期プライムレートがどのように動くかによって原則的には住宅ローンの変動金利も左右されるということになる。

住宅ローンの固定金利に関して言えば、長期金利と呼ばれる10年国債を基準に設定されている。実は国債は10年以上が長期、それ以上は超長期と呼ばれる。

短期国債は償還期限が1年以下、中期国債は償還期限が2年から6年、長期国債は償還期限が10年です。それ以上の15年、20年、30年、40年国債は超長期国債である。

なぜ住宅ローンの変動金利はプライムレートが基準か?

変動金利の住宅ローンは短期プライムレート(短プラ)、固定金利の住宅ローンは10年国債金利を参考にする。

変動金利であれば短い期間で利率を変更することができるから市場動向が変われば金融機関は遠慮なく金利を引き上げたり、引き下げたりする。

なぜ1年国債を基準にしないのかと言うと、元々基準がプライムレートだったからと言うこともあるが、1年国債はマイナス金利であることから到底基準になりえないためである。

企業貸付は国債よりはリスクのある融資だから、比較して高い金利が求められる。

このプライムレートというのはかなりの優良企業、例えば上場企業で財務状況も歴史もあり良い会社、具体的にイメージするならファナックやトヨタなどが銀行から融資を受ける際の基準金利である。

ただ、この低金利時代において、プライムレートというものの意味がなくなりつつある。

先程名前が出てきたような優良企業ならプライムレートから更に引き下げが行われ、実質的には0.5%〜0.8%とかその程度で借りることができる。

そう、このくらいの数字というのは、住宅ローンの変動金利とほぼ一致する。

住宅ローンの基準金利は短期プライムレート+1%とされており、これがよく見る「2.475%」という数字である。ここから各金融機関が引き下げを行うことで、例えば0.475%といった住宅ローン変動金利を導いている。

企業への貸出金利というのは、当然だがその金融機関が資金を調達する市場の金利に影響される。つまり、マクロ経済状況が変われば当然変動する可能性はある。

ただし、企業向けの貸付金利が上昇したところで、それは企業が業績好調で、利益が賃金として分配され、結果として消費が増える、つまり景気が良くなっているからではない。

原材料価格の上昇によるコストプッシュインフレが発生し、量的緩和政策を推し進めている中で、多少金利が上昇することはあろうが、現在の日本の状況でインフレが起こるとしたらそれは悪いインフレでしか無いだろう。

目下短期プライムレートは1.475%で変わりないが、長期プライムレートは令和4年2月10日に1.1%と前回の令和2年8月12日から約1年半ぶりに0.1%上昇に転じた。

これにより、住宅ローンに関しても変動金利から固定金利に借り換えたほうが良いというニュースを見たが、これは時期尚早だと考えている。

住宅ローンという視点から見れば低金利が続くのはありがたい。しかし、より大きな視点で経済を見たとき、ある意味で良いインフレが起こらないだろう日本の将来を想像すると、低金利が続き、世界的に見ると全く豊かとは言えない国になっているだろう。

住宅ローン金利から話は飛躍したが、大変寒々しい未来が待っているというのも、それはそれでなんだか気落ちしてしまうのである。

 

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