財務・会計

ベンチャー企業が口座開設するときは「特定法人」に該当する

平成27年度税制改正で口座開設時に居住地国の記載が必要に

いきなり税制改正とか言われてもよくわからないんですが…

確かに税制改正は毎年あるので経営者が追いかけるのは難しいですが、
法人としての手続きや書類作成をおこたると罰則がありますのでご注意を。

ベンチャー企業だろうが国際的枠組みからできた税法が関係する

「税金のことは顧問税理士さんにおまかせしています」

そういうスタートアップ企業さんやベンチャー企業経営者が多いと思いますが、
経理担当者を始めとしたバックオフィスの人は幅広く知っておいたほうがいいです。

今回は銀行口座開設時の「特定法人」の確認についてご紹介します。

法人設立をしたあとに銀行口座開設を行った方は必ず提出したと思いますが、
平成27年度税制改正において国際的な課税逃れを補足するため、
口座名義人の居住地国の記載や、特定法人に該当するか否かの確認が必須になりました。

手続き自体は銀行を始めとした金融機関が書面を用意していますが、
自社が特定法人に該当するか否かの判断をする必要があります。

多くの企業は特定法人に該当します

「特定法人」というと、特別な法人のように思いますがそうではありません。

特定法人は次のいずれかの法人に「該当しない」場合、「特定法人」となるとしています。
(書き方が非常にややこしいのですが「除外となる法人」を列挙していますので、それ以外のいわゆる多くの法人は該当します)

  1. その発行する株式が外国金融商品取引所又は金融商品取引所において上場されている法人(上場法人)
  2. 上場法人と他の法人との間に次の関係がある場合における当該他の法人
    イ いずれか一方の法人が他方の法人を直接又は間接に支配する関係(子会社・孫会社・曾孫会社)
    ロ 同一の者が当該上場法人及び当該他の法人を直接又は間接に支配する関係(兄弟会社)
  3. 国、地方公共団体若しくは日本銀行又は外国政府、外国の地方公共団体、外国の中央銀行若しくは日本が加盟している国際機関
  4. ⑶の法人が資本金、基本金その他これらに準ずるものの全部を出資している法人
  5. 収益事業を行っていない公共法人及び公益法人等
  6. 日本の報告金融機関等
  7. 外国の報告金融機関等など
  8. 持株会社(法令又は定款の規定により子会社(報告金融機関等を除きます。)の経営管理等以外の業務を行うことができないことが定められているもの)
  9. 主として⑵イ又はロの関係にある法人(報告金融機関等を除きます。)に対する出資、融資その他これらに準ずる取引を行うことを業務とする法人
  10. 届出書の提出をする法人の当該提出の日を含む事業年度の直前の事業年度(「直前事業年度」といいます。)が次の要件の全てに該当する場合におけるその法人(※3)
    イ 直前事業年度の総収入金額のうちにその直前事業年度の投資関連所得(利子所得、配当所得等のことをいいます。)に係る収入金額の占める割合が50%に満たないこと。
    ロ 直前事業年度終了の時の総資産の額のうちにその直前事業年度の投資関連所得の基因となるその直前事業年度終了の時の資産の額の合計額の占める割合が50%に満たないこと。

ものすごく細かい法律ですので読む気がなくなったという方も多いと思いますが、
基本的には「上場会社やその子会社、兄弟会社、政府系機関およびその100%子会社、金融機関、ホールディングス、投資法人」以外はすべて「特定法人」に該当します。

もちろん、ボランティア団体などの任意団体とか権利能力なき社団は該当しません。
(町内会の口座とか、父母会やOB会のような社団法人でもNPOでもなんでもない団体)

タックスヘイブン対策税制をはじめ国際的な課税逃れ対策が進んでいる

なぜ実質的支配者を報告する必要があるの?

それは「国際的な課税逃れを各国が協力して取り締まる・監視するため」です。

バミューダやケイマンといった有名な租税回避地はみなさんもご存知かと思います。
こうした国々は配当への課税や知的財産のロイヤリティーに対する課税がない、
もしくは極めて低率の税金しか課さない国内の税法を持っています。

そのため、海外の企業が税金を逃れるためこうした国々で法人を設立し、
そこが配当金やロイヤリティ収入を得るように流れをつくることで、
実質的に課税を回避することができたのです。

この仕組みを使って経営者の方などは海外に資金を溜めていたりした時期もあったと、
聞いていますが、今では税制改正によって極めて難しくなりました。

以前、国際税務のコンサルティングを仕事にしていた経験から言っても、
「租税回避地を経由する取引は百害あって一利なし」なのでNGです!

現実は有名企業も租税回避に励んでおりイタチごっこ

ニュースになることもありますが、AmazonやGoogleを始めとした、
大手のIT企業も国際条約や各国税制を駆使した租税回避を行っており、
各国の税法のいいとこ取りをしながら資金をアメリカ以外の国に溜めています。

国際法は国内法に優先しますが、外国の法律に対して口出しすることはできません。
そのためアメリカ企業がケイマン諸島に利益を還流していても、
それを防ぐためのアメリカの法律がなければその行為は合法となります。

しかし、こうした企業の課税逃れが深刻化している中でOECDを始めとした、
各国政府は国際的な枠組みをつくることでこのような行為を防ぎ始めています。

国際的なテロリストや反社会的勢力の取締りにも関係する

また単なる租税回避というだけでなく、
実は国際的なテロリストグループの取締りも理由なのかもしれません。

アメリカは世界の警察としてテロリスト対策に取り組んでいますので、
日本を始めとするOECD諸国も照会があればこういった情報を提供しているでしょう。

よくある話ですが、表向き普通の会社で(フロント企業)、
社長である代表取締役が普通の人だったとしても、
出資者である人間が犯罪者や反社会的勢力だと「配当」という形で、
利益を還元することができてしまいます。

「実質的に」そういった勢力に資金が供給されてしまう恐れがあるということで、
監視の対象になるだけでなく取引自体が停止、口座凍結となることもあります。

特に国際送金が厳しくなっているのはグローバルな犯罪集団がマネーロンダリングや、
資金調達のためにこうした銀行口座を活用していたりするからです。

既に「犯罪収益移転防止法」において実質的支配者に該当する、
個人の方の氏名・住所・生年月日等を書面等により確認する事になっています。

こうした反社会的勢力やテロリストに対して、国際社会は厳しい視線を送っています。
一経営者としての手間は増えてしまいますが、こうした社会性を守らない限り、
経営をする権利はないと思いますので皆さんも気をつけましょう!