スタートアップ

アメリカでスタートアップを始める人が目指すべきステップ

ブートストラップ型とスタートアップ型

アメリカではベンチャー企業と言っても大きく2つのパターンがあります。

一般的に「スタートアップ」は、外部資本を得て短期間で指数関数的に成長するビジネスモデルのことをいいます。TwitterやUberなどが代表です。一方で「ブートストラップ」というベンチャー企業もあります。ブートストラップについては定義がしっかりあるというわけではありませんが、少額の自己資本だけで始め、指数的成長を目指すタイプのベンチャー企業と言えると思います。

これらはどちらも利点と欠点があります。スタートアップは外部資本を入れる事により株式の希薄化が起こりますが、ブートストラップは自己資本だけで経営を回すためにこういったことは起こりません。

反面、スタートアップが投資家を通して様々なリソースを手に入れたり、次回ラウンドの投資への箔付けとして活用できる一方、ブートストラップは限られた資産を経営に用いなければなりません。利益が上がらなければ借入等も難しいため、ユーザー獲得のために多額の費用をかけることも難しいでしょう。

ジェイソン・カラカニスはブートストラップをエンジェル投資前の段階として定義していますが、必ずしも投資家からの資金調達が必須ではないであろうことを考えると、経営スタイルの違いとして考えたほうが良さそうです。

しかし、今回は一般的と思われる投資家から資金調達を行うスタートアップに焦点を当てて、なおかつ「アメリカで起業したい」「シリコンバレーで起業しようと思ってる」などとと思っているけれど、何をすべきかよくわからないという人に向けてどうすれば最初の取っ掛かりを得られるのか考えてみました。

日本では考えられない一桁違う資金調達や、様々な専門を持ったVC、そして夢を追い求める起業家たちなど、日本とはまた違った環境で切磋琢磨できて面白いですよ。

まずどんな簡単なものでもいいのでデモを作る

アイデアは素晴らしいと評価されても、それが実現できるのか。これは重要です。

そしてユーザーは喜んでくれるのかというところはまだ分からないというフェーズであれば、とにかくデモを作りましょう。そしてターゲットに使ってみてもらいましょう。

その際にスタートアップとして最も頭においておきたい点は「破壊的なアイデア」と「指数関数的成長」の2点です。シードにおける投資では何百倍にもなるリターンを期待して投資を行うため、それ以外の限界が見えるビジネスモデルには投資されません。

Draper Universityで学ぶシリコンバレーのVCでは何が好まれるか?|Week2
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アイデアが出来上がったらデモを作りましょう。どんなものでも無いよりマシです。自分が今できる範囲で実現可能なサービスをまずは作ってみるのも一つの方法です。

例えば、Airbnbはまだ2008年当時、多くのトラクションがあったわけではありませんが、ユーザーの声をスライドに取り込むことで投資家を説得しています。こうしたユーザーの生の声は投資家に対して安心感を与えることができます。

シリコンバレーにおけるアイデアステージの起業家支援

私は「ドレイパー大学(Draper University)」という起業家養成コースに通っていますが、このプログラムは本当にアイデアしかない人、アイデアすらない人が起業するためのマインドセットやスタートアップに必要な知識・ノウハウを得ることを対象にしています。

また、生徒の中には著名なVCやエンジェル投資家とのコネクション作りのために参加しているという人もいます。最終的にシリコンバレーのベンチャーキャピタリストたちの前でピッチをするチャンスがありますので、こうしたところで繋がりを作って後々につなげるというのも一つの手でしょう。

また、有名なアクセラレータープログラムであるY Combinatorによるオンライン・スタートアップスクールというものがあります。すでにスタートアップを立ち上げており、デモやユーザーがすでにいるサービスであれば「Starup School」というのに参加できます。

オンラインで週1回のメンタリングや同じシードフェーズの起業家コミュニティに参加できます。モデレートしてくれるメンターに週1回のアップデートをすることも条件です。

このアップデートを10回中9回、そしてグループオフィスアワーに10回中9回出席することが修了条件となっています。これを満たすとY Combinatorの修了証明書が与えられ、このコースを修了した100社のスタートアップは1万ドルのエクイティーフリーの資金が与えられているそうです。

Y Combinatorをオンラインで参加できる上に、資金まで与えられる可能性があるなら参加しないという手はありませんよね。

またアイデアが無いという人であれば、「Audit」コースも用意されています。講義の視聴権だけですがY Combinatorの様子を垣間見ることができるようになっているので結構おすすめです。

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一人だけでアイデアだけでは調達は難しい、チームでデモを作ろう

アイデア段階でエンジェル投資家やVCに対してピッチをすることもできなくはないのですが、よほどの魅力がないと難しいというのが現実です。

まず、キャピタリストも紹介でないと真面目に取り合ってくれないというのがありますが、それを通過したとしてもやはりデモやトラクションがない段階で数十万ドルの投資はされません。

できるだけ時間を無駄にしないためにも仲間を探して、簡単なデモが作れるようになってから投資家にピッチ(プレゼン)周りをするようにしたほうが効率がいいです。

とは言えシード段階でのデモやトラクションなどたかが知れているので、あくまでそれは「事業を進めているという姿勢を見せる」ための材料です。

最終的に人に投資するところがあるので、ピッチでの説得力やリーダーシップ、これまでの失敗と成功体験、そしてチームが盤石な体制であるように見えるよう、メンバーの経歴など少しでもよく見せる要素を増やして信頼される見栄えにすることも大切です。

ピッチ(プレゼン)イベントに参加する

アメリカではビジネスプランのプレゼンテーションを「ピッチ(Pitch)」と呼びます。野球での投手をピッチャーといいますが、このピッチも「投げる」というところから来ています。

ピッチ自体はプレゼンのことなので「VC詣で」をすれば毎日のようにすることになります。シリコンバレーには毎日4人のエンジェル投資家やVCにピッチしても回りきれないくらいの有名な投資家がいます。

こうした人にアポイントを取るのもまた難しいのですが、シリコンバレーやサンフランシスコ・ベイエリアではこうしたピッチイベントは結構な頻度で開催されています。最近ではVRやブロックチェーンに関するイベントが多いですが、他にもヘルスケアやバイオ、Webサービスなどいろいろな分野別ピッチイベントが開催されています。

最近では「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」において、大規模なスタートアップのためのピッチイベントが開催されており、公式ビデオによると参加者のうち71%が合計5.43billion(約6千億円)を調達。また16%の参加企業が後に大手IT企業に買収されているということです。

特にコネクションがないという場合でもこうしたイベントであれば比較的参加しやすいでしょう。また現地で新たにコネクションが手に入る可能性が高いです。

シードアクセラレーターへ応募する

有名なのはやはり「Y Combinator」と「500 Startup」です。どちらもアクセラレータープログラムとしては大規模でかつ有名であるため、卒業生は一目置かれるところがあります。(もちろん、成功している会社ばかりではありませんが)

Y Combinatorはサンフランシスコにおける3ヶ月間のアクセラレータープログラムで、投資条件は7%の株式に対して150千ドル(1695万円)です。また非営利団体に対しては100千ドルを寄付するという制度もあります。

500 Starupもまたサンフランシスコにおける4ヶ月間のアクセラレータープログラムで、投資条件も6%の株式に対して150千ドル(1695万円)としています。参加には37.5千ドル(約424万円)の費用がかかります。

シリコンバレーでの投資条件は基本的に「SAFE(Simple Agreement for Future Equity)」と呼ばれる条件で投資されることが一般的です。SAFEの詳しい内容や現在主流になっている理由はこちらが詳しいです。

日本のアクセラレータープログラムでも、SAFEに近いけれども「転換社債」の一種類として考えられる条件である「J-KISS」が用いられるようになりました。

日本の法律に合わせて起業家と投資家の負担を減らすためにシンプルに設計されていますが、SAFEに比べると日本では法律の関係上登記手続き等が必要で、少し複雑さが増えているようです。

さらなる成長のためアクセルを踏む

もし、アクセラレータープログラムを終了するところまでたどり着いたのであれば、起業家の中でもかなりの優秀なチームになっていることだと思います。

もうやり遂げる以外にありませんよね。

その後はシリーズA、シリーズBと調達額を増やしながら、ユーザーを獲得すべくプロダクトのさらなるブラッシュアップを図っていきます。その際はこれまでに支援してくれたアクセラレーターなども応援してくれますので、有利にことを進められることと思います。

確かなユーザーの期待に答えるプロダクトさえあれば資金は簡単に集まります。むしろ、人気企業の投資に対しては、投資家が殺到してしまうでしょう。

このフェーズにおいてもピッチイベントに参加することで新しい投資家とのコネクションを作ったり、認知度を高めることができますので、プロダクトに注力しつつ戦略的にこうした機会を活用していきましょう。

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