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【公認心理師を目指す?】放送大学で心理学を勉強するための学習計画

放送大学では心理学系資格のための学習、単位取得を行うことができます。現状、心理系資格には「認定心理士」「臨床心理士」「公認心理師」の3つがあります。

今回は、実際に心理学の勉強をしている身として、心理学に関する資格にどのように取り組むか。どこを目指して勉強するかについて整理したいと思います。

なぜ心理学を勉強するのか?

臨床心理に取り組むのであれば資格取得はスタートライン

心理学を学ぶにあたり資格は必要ありません。ただ、心理学といっても、病床に挑んで診察や治療を行う臨床心理の分野においては、資格はひとつの医療に携わる必須要件です。

ですから、あなたが職業として心理学の知識をつかい「クライエント」と向き合って、心理的に悩んでいたり、落ち込んでいたり、トラウマに苛まれているような人を病院や福祉施設、学校、更生施設などでケアをしたいと考えるならば、資格取得を目指すべきです。

逆に、心理学を学びたいだけなら資格は必要ありません。

世界の著名な心理学研究者が必ずしも心理学の資格を持っているわけではありません。これは私の私感ですが、大学の先生であっても、臨床心理分野の研究者を除いて、資格を持っている人のほうが少ないかもしれません。

ですから、大切なことは、ズバリ「あなたはなぜ心理学を学びたいのでしょうか?」ということになるでしょう。

人間の心理に興味があるからでしょうか?
それとも仕事に活かせる資格が欲しいからでしょうか?

純粋な人間心理や行動に関する興味であるならば資格は不要

心理学を学ぶこと自体に興味があるという考えであれば、人間の研究から生まれる広がりは間違いなくあなたの知的好奇心を刺激してくれるでしょう。

それは心理学が人間の心理について勉強する、分析する学問、精神的に困難な状況に置かれている方へのカンセリングのための学問というだけではないためです。

ノーベル経済学賞も受賞しているダニエル・カーネマンが取り組む経済学と融合した行動経済学や、情報技術と融合したユーザーエクスペリエンスデザインなどは、心理学の知見を生かして他の分野と融合して生まれた新しい学問分野です。

こうした、人間行動や心理に関する純粋な興味関心が強いならば、必ずしもカウンセリング技法や実務経験を積む必要はないかもしれません。

心理臨床に関する資格がなぜたくさんあるのか?

心理学を学んでカウンセラーになりたいということが目的であるならば、心理学の資格を目指すことは大切なことです。

心理学の資格は心理学について体系的な知識を持っているということを証明するものでありあり、さらに臨床心理に従事するなら、現実的に深刻な悩みや辛い状態にいるクライエントに対して適切な働きかけを行い、快方に導くことが仕事になります。

医師や看護師、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士のように最低でも4年制大学、さらに大学院修士課程での学習と実習経験を積む、臨床心理士や公認心理師の資格は、最低限身につけるべき資格として考えられるでしょう。

これまで長い間、臨床心理系の資格は学会の認定する民間資格のみでした。

しかし、社会的なニーズの高まりに伴い、カウンセラーとして一定の水準を担保するために、医療や臨床心理や精神保健などの分野から求められ、創設されたのが公認心理師という国家資格です。

ですから、これから心理の知見を生かしてカウンセラーなど臨床分野に携わりたいなら、国家資格である公認心理師を目指すことはひとつの到達点となるのではないかと考えています。

臨床心理士はカウンセラーとしての実務に重きをおいた専門資格、公認心理師は認定心理士をベースに、大学院レベルの学習と450時間の実習が求められるということで、ほぼ同程度、もしくは少し上位の資格になると考えられるためです。

あなたが心理学の知見を生かしてそれを職業にしたい、臨床で困っている人に向き合いたいと考えているならば、公認心理師を目指して、少しずつ勉強をしていきましょう。

3つの心理系資格をわかりやすく解説

民間資格も含め、学術的にある程度認められている心理系の資格には、認定心理士、臨床心理士、公認心理師があります。これらはどれが良いということではありませんが、認定心理士は心理学の基礎的な専門知識の理解のための登竜門となります。

認定心理士は、日本心理学会が認定する心理学の資格であり、4年制大学で心理学の標準的な知識と基礎技能を取得していることを認定している資格です。

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格で、病院や専門機関で心理カウンセラーとして認められる高度の資格であり、大学院にて心理学の専門知識を身に着け、臨床のための技能訓練を受けた上で、資格試験に合格する必要がある資格です。

公認心理師は、厚生労働省が認定する資格で、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育などの分野において心理学に関する専門知識及び技術を持って、カウンセリングや助言、心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報提供を行います。

放送大学では先ほど紹介した3つの資格すべての学習ができます。

ただし、認定心理士が学部で科目履修のみで認定されるのに対して臨床心理士や公認心理師はさらに大学院での学習や実地研修も要求されています。

臨床心理士は放送大学大学院修士課程の試験に合格しなければ入学することができません。そして、放送大学は第二種大学院指定のため1年間の実務経験も必要です。

公認心理師も大学院修士課程での学習が必要ですが、現状放送大学では実施を見送っています。そのため、公認心理師を目指すのであれば、学部の必要科目は放送大学でも良いのですが、修士課程は別の大学院に入学する必要があります。

放送大学の認定心理士と公認心理師対応科目一覧

認定心理士の勉強と公認心理師の勉強はほぼ一致している

それでは、臨床心理の資格として唯一の国家資格である公認心理師を目指すとして、心理学を専門に学んだことがない人はどのように取り組めばよいのでしょうか。

ゼロから公認心理師になるにはある程度時間が必要です。まず学部において必須科目の単位を取得した上で、実習を行い、さらに大学院修士課程にて同じように単位取得とより長期の実習が課せられます。そして、公認心理師試験を受験し合格すれば晴れて公認心理師となります。

これだけの科目が課せられていると流石に途方も無いように感じてしまいますが、実は放送大学でも必要な単位が取れれば申請することのできる「認定心理士」という資格を通過点にして、公認心理師を目指すことができます。

放送大学の学部における認定心理士および公認心理師への対応講義一覧を一つの表にまとめましたので参考にして下さい。

2022年度放送大学 認定心理士・公認心理師対応科目一覧表

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1xixDgSDrkVwU7RiSLNsOrzQblcFfjcUZdM9NTqw3UZ0/edit?usp=sharing

認定心理士に必要な科目はすべて放送大学で学べる!

このように認定心理士になるための必要な科目は放送大学で取ることができます。そして、公認心理師を目指す上で、認定心理士を取ることは一つの通過点として活用できます。

この認定の目的は心理学の諸分野をまんべんなく学ぶことです。ただ、もしあなたが心理学のより特化した分野を中心に学びたいのであれば、大学院で専門的に研究を行うか、それらの科目群に強い大学で学ぶことも良いかもしれません。

どういうことかというと、例えば上記の表を見て頂けるとわかるように、認定心理士で認められる科目領域はaからgまでに分かれていますが、放送大学で開講される科目には偏りがあります。

例えば、e領域の科目は「神経・生理心理学(’22)」(2単位)のみが開講されているため、この領域で4単位を取得することはできません。

とはいえ、他の心理学を学べる大学においても、神経・生理心理学をより詳しく学べる学部レベルの講義を開講しているケースはあまり多くないため、認定心理士を目指す際にはe領域で4単位を取得するということは現実的ではないのかもしれません。

ただ、神経・生理心理学という科目は公認心理師の必須科目であるため、公認心理師を目指す中で必ず学ばなければなりませんので、やはり、公認心理師と認定心理士のどちらも認定される科目を満遍なく学習していくということが大切です。

臨床心理士と公認心理師のどちらが良いのか?

心理の実務家としてはどちらも取得したい

これまで述べてきた中で心理学分野における資格の全体像が見えてきたかもしれません。

臨床心理士と公認心理師はどちらも大学院修士課程での学習が必要ですが、臨床心理士になるための大学院に入学するのに必ずしも学部レベルで心理学の学習は求められていません。むしろ、専門職大学院があるように、実務に従事するカウンセラーとしての学習に重きをおいた資格です。

一方で公認心理師は学部レベルの必須科目要件を満たした上で卒業し、実務要件を満たさない場合は、大学院にて必須科目の学習と450時間の実習が求められ、受験資格を満たすことができます。

この2つの資格の大きな違いは、臨床心理に関する演習や実習科目に重きをおくのが臨床心理士、心理学全般の学習に加えて実習も臨床心理士と同じくらい行うのが公認心理師ということにあります。

そのため、臨床心理士になるための必須科目と公認心理師科目は一部重複していますし、大学院によっては修了要件としてどちらのカリキュラムも満たすことが求められていることもあります。

(例)国際医療福祉大学大学院臨床心理学専攻
https://www.iuhw.ac.jp/daigakuin/faculty/health_welfare/clinical/youken.html

公認心理師は既に実務に従事している人に経過措置がある

公認心理師は2017年に法律が制定された比較的新しい国家資格です。

そのため、すでに病院等で臨床心理士として勤務されている方や、実務経験が5年以上ある方については実務経験と講習の受講で公認心理師になるルートが経過措置としてありました。しかし、第5回公認心理師試験をもってこのルートでは受験することはできなくなります。

その意味で、これまで実務家として活動してきたカウンセラーの方については、大学や大学院で学習を指定なくとも、講習と試験合格だけで公認心理師になることができました。

しかし今後は4年制大学にて定める科目を履修、その後指定機関での実務経験を積むか、もしくは大学院にて定める科目を履修した者のみが公認心理師試験を受験することができるようになるため、知識や技能の水準はある程度均一になるものと思います。

しかし、クライエントとの対話においては、実務経験により信頼関係の構築が、そのカウンセリングの成功に大きな影響を与えること、そしてこれまで心理学系資格は国家資格になっていなかったという背景を踏まえるとこの経過措置は致し方ないところがあります。

なお、臨床心理士については、指定大学院にて定める科目を履修したもののみが認定されますので、その意味においては臨床に関しての学習水準は一定程度担保されていると言えます。

心理に関係するその他の職業資格

心理学と関連する資格はこれらの他にも精神保健福祉士(国家資格)、社会福祉士(国家資格)といった分野と重なるところがあります。また、民間資格・学会認定資格では産業カウンセラー、臨床発達支援士、学校心理士などもあります。

臨床心理士が大学院レベルの心理系資格として、医療や福祉分野で広く認知されてきたように、民間資格だからといって認められていないということはありません。

それぞれ認定までに必要な要件は異なりますが、ある程度の時間を掛けてきちんと修了しなければ得ることができない資格であることから、民間資格であったとしても認められるものはあります。

例えば、産業カウンセラーなら企業、産業心理を専門にした資格であり、人事系の仕事をされている方が多く取得されています。臨床発達支援士ならば学校や自治体の機関など、心理系の分野に携わる方であれば多くの方が認知している資格であると思います。

心理系資格を武器に就職することはできるのか

資格が要件の場合は必須、しかしどう活かすかは自分次第

これまで見てきたように、臨床心理士や公認心理師は大学院レベルの高い水準での学習が求められる資格であり、通信教材だけで取得できるような資格とはまったく異なります。

だからこそ、この2つの資格を持っているカウンセラーは公的機関や精神科・心療内科などの病院での採用の要件であり、その他の資格を持つもしくは持たないカウンセラーとは一線を画しています。

ただ、これらの心理系資格のように高い水準での学習が求められ、苦労して取得したとしても、就職につながるかというとそうとはいえません。

確かに心理カウンセラーを目指して、大学院に進学し医療機関や公的機関に就職するということは現実的に可能です。しかし、小さな医療機関や地方の求人では実務経験を求めていたり、競争率が高い病院も多いのが現状です。

実際にindeedという求人検索サイトで「公認心理師」をキーワードに求人を検索すると、正社員であっても年収200万円から300万円が2615件、300万円から400万円が1384件、それ以上になると極端に件数が減ります。

自治体の教育センターの求人を見ても、これらの心理資格を持っている教育相談員の多くは会計年度職員、つまり1年の契約社員という採用となっていることが多いです。

そのため、これらの心理系資格を持って就職に困らないとか、高年収であるということには繋がらないということは覚悟しておいたほうが良いですね。

臨床心理に従事しなくとも経験を活かす方法を模索したい

こうして整理していると、自分は公認心理師や臨床心理士という資格が欲しいというわけではないということを改めて思います。どちらかといえば臨床に携わりたいという思いよりは人間行動や心理という事象に対して興味があるように思います。

一方で、これまで聴覚障害のある方と多く接してきて、彼らの聞こえの悩みやこれまでの人生経験を聞いて、私が今まで健聴者とよばれる障害のない人の世界しか知らなかったことにハッとしました。

そして、聴覚障害は目に見えない障害であるため、他の障害と比べると「普通の人」っぽく見えてしまう。そうであるがゆえに、「あの人は無視する」、「何度も聞き返してうざい」、「めんどうくさい」というような日常の他者とのコミュニケーションに大きな障害が生まれてしまっているという事実に気づきました。

障害が障害であるのは、それが治療したり、解決することは不可能であるためです。現実的に悩みを抱えている人を相手にした時、どのように対応したらよいか、なんとかならないか、という思いを抱いたことは一度ではありません。

私は技術でこの問題を解決したいと考えたのですが、いくら人工内耳をつけても補聴器を活用できたとしても、やはり「聞き取りにくいこと」というのはたくさんあり、そのすべてに対応することはできません。

しかも、厄介なことに下手に聞こえていると思われることによって、より一層、問題を難しくさせてしまうこともあるのです。

そのような話を聞いていて、やはり「コミュニケーションが人間らしさにつながる」ということを意識するようになりました。話をすること、聞くこと、よく言葉のキャッチボールといいますが、人と気持ちよくなんらかの情報交換をする関係が、人間を人間たらしめているのではないかと思います。

傾聴という言葉がありますが、例えば嫌いな人の話を傾聴するということはできないでしょう。それは聞くということがそもそもその人との関係つくりであるためです。話す、聞く姿勢を整えるということは、心理学を学ぶだけではなかなかできません。

また、さらに深堀りするならば、そもそもその「話す聞く」ということも聴覚障害者にとって簡単ではありません。手話を言語として使っているろう者と呼ばれる方々の精神的な悩みをどのようにカウンセリングするのか。それは手話を使って対話する他ありません。

これは極端な例ですが、言いたいことは、カウンセラーとしては臨床心理学を学ぶということだけでは足りないのです。クライエントの背景や言語、文化、知識などを理解した上で、自分が関わっているフィールドで必要な傾聴のための武器(例えば言語だったら手話や英語、中国語かもしれない)を自分で選べるだけの力がなければならないと思うようになりました。

心理学を学ぶことで少し優しくなるかもしれない

それでも、私が心理学に興味を持っている理由、それは一つは純粋な人間行動や心理への興味ですが、もう一つは私はカウンセラーに向いていない性格だからです。

普通は「やりたい!」「向いている!」ということを仕事にしたりすると思いますが、私はどう自分で考えても、性格診断テストを受けても心理カウンセラーには向いている性格ではありません。

内向的で、自分の興味関心には忠実ですが、自分の意見や主張をすることには勇気が必要で、かつ他人の心や気持ちには鈍感だと思います。もしそのような人がいたら、話を聞いて欲しい人は普通、カウンセリングに来ようと思わないかもしれません。

しかし、世の中にはそのような人も他に沢山いると思うのです。

例えば、カウンセラーが傾聴のために相槌を売ったり、話したことをオウム返しすることがありますが、それで話を聞いてもらえていると思うクライエントもいれば、カウンセリング技法として相手してくれているだけであると冷めた目で見てしまうクライエントもいると思います。

こうした私のようなひねくれ者に対して、例えばカウンセリング技法が通用しなくても、もしそのカウンセラーがぶっちゃける人で、その人らしく本音で向き合えば、そのひねくれたクライエントもいつか答えてくれるはずだと信じています。

心理学や臨床心理を学ぶことで、知識が増えたことでクライエントを逆に型にはめて対応してしまうことはしたくないと思っています。

むしろ、体型だって様々なタイプのクライエントの総合的な傾向や理解をしていく中で、その人にあった対応を個別具体的に探していくというのが私の理想とする人との向き合い方だと考えています。

このように、私のような優しくない人間が、少しずつ他社の気持ちについて興味を広げ、自分を取り巻く周囲の方と気持ちよく関わるため、心理系の資格はひとつの学習目標であるのと同時に、自分の想像もしなかった世界を知り、適切に向き合うことができるための心構えを整える準備となるのではないかと思っています。

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