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【書評】「白いネコは何をくれた?」に学ぶ人生のマーケティング

戦略と言っても、いやらしい駆け引き、相手を出し抜くという類のものではありません。自分を知り、自分らしく戦い、自分らしく輝く明日を生きるということです。

私は巷にあふれる自己啓発本やセミナーを冷めた目で見ていた人間でした。「何かをした気にさせるだけで何もしない人」をたくさん生み出しているように見えたからです。

しかし、最近はちょっと考え方が変わってきました。自己啓発は「何か行動したときに立ちはだかる壁を前にしたときに進むための一つの指針」になるのではないかと思うようになったからです。

人生のマーケティングというと商業主義の匂いがしてすこしいやらしいですが、今一歩目を踏み出そうともがいている人に、焦らず自分と向き合う時間を作って欲しいと思います。

今日を変えなければ、明日も将来も変わらないが焦る必要はない

「現状維持は退化」、そのとおりです。

こういった話をするときに「現代ではAIやICTの進展により加速度的に社会変化が進んでいる」という主張をする人もいますが、そこまで煽る必要があるかなと思います。

人類の歴史では技術が生まれ、イノベーションが起こることで社会は変化していきますが、その変化のスピードは思っている以上に遅いと思いませんか。それは、人間がこれまで慣れ親しんだ生活からその技術が日常に普及するまでにとてつもない時間がかかるからです

どんなにAIが速いスピードで導入されても、人間の生活そのものをより便利にすることはあれど、人間の営む生活そのものは大きくは変化しません。

とはいえ、競争相手を競合他社や同じ企業に入社したい人たちとみなせば、同じことをやっていたらいつの間にか他の会社にもキャッチアップされたり、知らないうちに他の人はスキルを付けていたりして、自分の価値は相対的に下がるということは事実。

就職活動や転職活動においても「強み」を明確に打ち出せる人は圧倒的にうまくいきます。自分が持っているもの、経験という事実から強みという価値を自ら規定するのです。だから、強みは決して最初からあるものではないですし、どんな人にも必ずあるものだと思います。

少なくとも、採用において求める能力が備わっていることを説得しなければ先に進めない以上、「自分はこれが強みだ」ということをひたすら価値つけて、説得することが必要です。

焦る必要はまったくないのですが、時間をかけてでも戦略的に生きていきましょう。

戦略の統合フレームワークBASiCSでいちばん重要なのは一貫性

この「白いネコは何をくれた?」において、中心となる戦略論は「BASiCS」です。

この戦略のフレームワークにおいて最も必要なことは、それぞれの要素を独立して検討するのではなく、全体の一貫性を維持しながら検討することです。

「5C」や「4P」といったマーケティングフレームワークにも言えることですが、どこか一つの要素を緻密に検討した結果、他の要素が論理的に一貫性を失い、埋まらなくなってしまうことが起こります。

フレームワークに当てはめることは思考の整理として有用ですが、あくまで進むべき方向性を指し示すための整理であることを念頭に置くと、緻密に精査することを重視しすぎることなく、全体を俯瞰して考え、多少の無理には目をつむる場面を許さなければ先に進めなくなります。

フレームワークの当てはめだけに注力した結果、情報は整理されたものの、ただ単に当てはめただけの「仏作って魂入れず」状態に陥り、実行のための力強いサポーターとしての役割を失ってしまうケースが多く見られます。

この点は改めて強調しすぎることはないと思いました。Amazon Kindleだと他の読者の方のハイライト箇所がわかるのですが、線が引かれてないのがちょっと気になるところです。

自分から他人を削り出し、ハラヲククル

不完全燃焼に苦しんでいる人は少なくないと思います。かくいう自分も「まだやってないことがあるはずだ」、「今これをすることは良いのか」といった邪念に惑わされ、「今自分にできることを精一杯や」りきる前にやめてしまうことがあります。

腹を括ることができれば、全力で頑張れる、そして戦略BASiCSは、その「ハラを括る」ツールであると筆者は論じます。

自分とは誰か?、自分は誰でないか?

自分の中から、他人にあてはまる要素を削りだし尖らせていくプロセスが進む中で「自分は誰だと世の中に宣言」する。その決定は後で変わっても良いが、今、できることに集中するのが120%の状態だといいます。

ここでみなさんがお悩みになるのは、自分のこれまでの経験や経歴とこれから自分がやりたいこと、やってみたいと心でずっと思っていたことに対して、フレームワークはどのような示唆を与えるのかということでしょう。

例えばキャリアチェンジをしたいと考えたときに、新卒や第二新卒程度の年齢であれば未経験でも歓迎してくれる会社は多いでしょう。しかし、それ以上になると経歴や職歴を重ねてより専門的なマネージャーポジションを期待されることが多いと言えます。

そうしたときに、自らの強みがキャリアチェンジに直接生かせないことは当然生じてしまいます。しかし、コンサルティング会社やビジネススクールを挟むことで少しずつキャリアに幅を作り、進みたい方向を切り開くことは可能です。

その際も「なぜ自分がそのような選択をするに至ったのか」という点をしっかり掘り起こしておかなければ、やはり一貫性という観点で説得をすることは難しいでしょう。

人生は必ずしも戦略通りに行くわけではありません、偶然の出会いや運によって大きな転機を迎えることもあります。しかし、自分の心に従い真剣に掘り下げようともがく人間には、良い出会いがあちらから向かってくると思います。

その瞬間を掴み取る構えを常にしておくことが、すなわちBASiCSに基づいて戦略を考えることです。人生のマーケティングを考えた上で動くタイミングを待ち構えることが戦略的な人生であると考えています。

早速、今週末はBASiCSに取り組んでみませんか?

白いネコは何をくれた?

白いネコは何をくれた?

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「白いネコは何をくれた?」はKindleで購入することができます。物語になっているのでとても読みやすいです。ただ、読むだけではなく実際に行動に移すことまで決意してやってみませんか?

今週末、普段とは違う喫茶店や公園などに足を運んで、自分の過去の棚卸しをしてみましょう。時間があれば実家に行って子供の頃の聞いたことのない話や、アルバムや卒業文集を見てみるのも良いかも知れません。

そうして、自分の事実を強みとして捉えるのです。何をしてどう思ったのか、自分にはなにもないと言い聞かせる前に、自分の事実をすべて強みとして考えてみましょう。

地方に住んでいたことも、ゲームが好きだったことも、足が早かったことも、おしゃべりが好きだったことも、思いがけず賞をとったことも、話しやすいと言われたことも、真面目だと言われたことも、人の心を察するのが得意なことも、すべてあなたの強みになります。

その上で自分が戦いたい場所があるのであれば、そこでどう活かせるのかフレームワークに則って整理してみてください。自分の進みたい方向と強みの両方が分かっている人は本当に強いです。

ぜひ一度週末1日だけでも時間を作ってやってみましょう!

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