見た目で判断されることがわかってるからデザインを重視する
シリコンバレーのスタートアップはロゴやピッチ用資料にとても凝っています。
30秒のエレベーターピッチ、長くても30分という時間で自らのビジネスを投資家に売り込むには、洗練されたプレゼンテーションと視覚的に効果のあるデザインを用いることが重要であると分かっているからです。
どんなにビジネスプランが素晴らしくても、それを伝えられなければ意味がありません。逆にどんなに変なプランであっても熱意が伝われば説得することができるかもしれないのです。
ここで言いたいのは「芸術的なスライド」とか「最先端のデザインのスライド」が良いということではありません。
「相手の身になってわかりやすく示す」デザインであるべきだということです。
わかりやすいというのは「情報が整理されている」ということのみを指しているわけではありません。相手の行動を促すために、時には感情的に、記憶に残るインパクトのある効果的な表現をすることもまた、相手のわかりやすいを引き出します。
つまり、内容をいかに伝えるのかということにとても重きをおいているのです。
日本のスタートアップでもピッチコンテストなどでこのシリコンバレー流のピッチテクニックを発揮している起業家も見られます。そして彼らは優勝しています。(SmartHRの宮田さんが上手い)
とてもインパクトがありますし、ビジネスもわかりやすい。日本ではシリコンバレーの起業家が当たり前のようにやっていることを出来る人がまだ少ないのでこれが出来る経営者はピッチに圧倒的に強いのです。
なぜ日本の会社の資料はあまり美しくないのか
日本人がデザインに関して鈍感だとも思いません。無印良品やユニクロなどのデザインをみても世界的に劣っているとは思わないですよね。
ただ、普通の会社のパワーポイント資料は文字の多い少ないに関係なくデザインとして美しい資料であることはまずありませんよね。これは不思議な事です。
人に伝えるためのツールがスライドであるならば、気持ちよく見てほしいと思いませんか。
「いや、内容に価値があるのだからデザインは二の次だ」というのはおかしな話です。
内容に価値があるにもかかわらず、伝えるための表現が劣っていれば伝わないということは往々にしてあるのです。
それは自分のちっぽけなプライドが故に、愛する人に「愛してる」と伝えずに、亭主関白な態度を取ることで勝手に伝えていると思い込んでいるようなレベルの勘違いです。
もし、思い当たるフシがあれば今日から早速デザインをしっかりと意識しましょうね(笑)
どうしたら良いデザインのスライドを作れるのか
会社で指定されたデザインがある場合がほとんどだと思います。まずはこれらのテンプレートに描いてあることをきっちり守ることが大切です。
私もMSゴシック指定のテンプレートに反抗してメイリオなどを使ったスライドを作っていましたが今思えば自分勝手も甚だしいです。企業のブランドイメージをコントロールし、誰が作っても同じデザインで資料を提供するために会社の指定は守ります。
会社のデザイン指定がない場合はデザイン会社に依頼して作成してもらいましょう。一度テンプレートを作ってしまえば、以後も使い続けることを考えると決して高くないので思い切って依頼してみると良いです。
https://www.virtual-planner.com/
http://powerpoint-design.biz/index.html
特に資料を外部に公表したり、講師など発表する機会が多い企業は洗練された信頼できる企業であることを印象づけるためにもプロの作成したデザインを使用するべきです。
ここで気をつけたいのは、あくまでキレイな見た目を作ることではなく、相手に伝わる強くて美しいデザインのあるべき姿を提示してもらうことが大切だということです。
資料の文字数がとても多いにもかかわらず、画像や図を多用したシンプルなスライドを作ることはできません。美しいデザインは極限まで内容を絞り込んだ必要最小限の内容であるからこそ相手に強いメッセージが届くということを忘れないでください。
理想としては米国のスタートアップが投資家向けに用いる「ピッチデック(Pitch Decks)」のようにタイトルとメッセージとシンプルな図表のみの美しいスライドを目指しましょう。
このピッチデックはシンプルで力強いインパクトを与えるプレゼンのテンプレートであるため、有料でピッチデック用のテンプレートが各所から販売されています。私も購入していますのでぜひこうしたデザインを活用してみてください。
https://www.unicornpitch.com/en/products/pitch-deck
https://pitchdeck.improvepresentation.com/
ビジネス×デザインに関する推薦書籍・本
デザインについてはたくさんの本が販売されています。しかし、正直に申し上げて一人で本から学び、実践するのはとてもむずかしいです。
そのため、全国でワークショップなどが開かれています。こうしたワークショップは誰にも開かれていることが多いのでぜひ一度お手軽に参加できそうなものに参加してみると良いでしょう。
デザインは学びにくいですが、デザインの考え方を知るには、デザイン思考の元祖ティム・ブラウンの啓蒙書と、アイデアを短期間で検証するリーン・スタートアップの考え方を知っておくことをおすすめします。
これらを抑えておくことで、単に見た目のデザインというだけでなく、ビジネスデザインや新事業創出という大きな視点から、デザインのパワーを知ることができます。
デザイン思考が世界を変える (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
早川書房
売り上げランキング: 1,061
Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)
オライリージャパン
売り上げランキング: 3,738
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デザインという言葉からイメージするのは「デザイナー」や「おしゃれ」という言葉かも知れませんが、問題を解決するための考え方という広い意味合いで捉えることができれば、その応用範囲はとても広がります。
人間が「美しい!」と感じる感覚はある程度共通しています。そうした感性を経験的に体系化したものがデザインの最初であり、すべての物事は人間ごとである以上、どこにでもデザインの考え方、つまり「問題解決のための考え方」という要素が出てきます。
プレゼン資料をかっこよく作ることも、読み手により強い印象を与えるという目的のための効果的な考え方であり、ユニバーサルデザインという言葉も障害のあるなしによらない社会のデザインという意味からきています。
デザインとビジネス。この関係を最近特に強く意識しているのがシリコンバレーのスタートアップ達です。ここから効果的なデザインによる大きな価値創造が生まれていることを踏まえれば、日本でもスライド一枚のデザインにこだわってより大きな影響を与えるビジネスが生まれることを期待したいですね。