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ファーウェイ事件|中国に怯える米国追うしかない日本・反論できない中国

日本政府がファーウェイを排除する理由は米国がそうしたから

日本政府はファーウェイ及びZTE製品を重要な分野において使用しないよう協力を呼びかけています。ファーウェイの通信基地局向け機器はソフトバンクが導入していましたが、今後5Gでは使用しない方針を打ち出しています。

日本にはファーウェイ製品にバックドアが仕掛けられているかどうかを判断できる人材はほぼいません。米国のNSA職員であっても極めて難しいことを日本政府が判断出来ません。つまり、安全保障上の理由と主張するその根拠は、あくまで米国がそうしたからという理由に基づいているのです。

協力を求める分野は情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、行政、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油。悪意あるプログラムで社会機能が麻痺するなどの安全保障上の懸念を理由として挙げています。
https://smhn.info/201812-japanese-gov-ban-huawei

日本の場合さらにたちが悪いのは、判断できるほどの能力がないがゆえに、その排除範囲を米国にも増して広げてしまうという点です。万が一日本から機密情報が漏れたと米国に言われたら大変だという理由で、ほとんど関係ないであろうものまで排除するのではないでしょうか。

そこまでしても、日本は米国から絶大な信用を得ているわけではありません。同盟国の中でもファイブ・アイズの次、ランクBという扱いです。そのため日本の要人は米国のスパイ活動の対象になりますし、NSA(アメリカ国家安全保障局)の入手した重要な極秘情報は渡されないのです。

ただ、同盟国である以上米国の安全保障政策に協力する必要があります。日本政府として中国製品が信用ならないから排除するという決断をしたというより、米国の同盟国であるという状況を踏まえてしなければならないと考えたという点でこれは極めて国際政治的な問題なのです。

ファーウェイやZTEが米国にここまで徹底して排除される背景は、米国の安全保障政策において「すべての情報を手に入れる」ことを組織の重要目標とするNSAの活動を維持し、これら中国政府も同様の活動を行うことを防ぐためです。

情報はどちらかが持っているからこそ有利になります。全ての国に情報が行き渡る世界はインターネット的ではありますが、力を手に入れるには相手の情報をどれだけ知っているかが重要です。米国は米国以上に情報を持つ国を将来永劫作りたくないのです。

思い返せば、米国大手通信会社ベライゾンやAT&Tがファーウェイのスマートフォンを米国内で販売しないことを決めたのは2018年の頭でした。この2社はNSAの重要な技術パートナーでもあります。当然にアメリカ政府から直接圧力がかけられる企業のうちの一つでした。

中国はどうあがいても、米国からの批判に反論できない

中国の王毅国務委員兼外相は11日の講演で「中国公民の正当な権利を侵害するいじめ行為は座視しない」と述べ、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)幹部の拘束を巡る米国とカナダの対応を批判した。中国外務省が発表した。
https://this.kiji.is/445171360738591841?c=110564226228225532

「いじめ行為」という言葉が原文でどう表記されていたかは気になりますが、それはさておき、中国はどうあがいても米国にいじめられる立場にあります。たとえ中国政府や中国企業に悪意がなかったとしても、中国が現在以上に敵視されない世界は望めそうにありません。

個人的には中国にどのように一連の背景が伝えられ、中国国民がどのように反応するのかということです。反日デモで被害にあった日系企業の製品のように、米国系製品を排除するような消費者運動を広げていくのか。そしてそのような行為を中国政府は許すのでしょうか。

その答えはNoです。中国政府は共産党支配を正当化するために国民を管理する方向を強めてきました。そのため、国民の運動や活動を中国政府がコントロールしているという認識は、米国だけでなく世界中の国が持っています。

米国に対する中国国民の感情が悪化し、デモや製品排除の運動が自然に広がったとしても、米国政府は中国政府が主導して行っていると言いがかりを付けることができます。そうでなくても、止められるにもかかわらずわざと米国批判をさせていると批判することができます。

そして何より、中国国民による中国政府批判につながることを恐れています。

国内から「米国の都合に載せられるのは中国政府が弱腰だからだ」と批判されることはなんとしても避けたいのですが、外交上で米国に対立する強い姿勢を出すことはできないというダブル・バインドに陥っています。これを国際政治ではパットナムが定式化した「2レベルゲーム」の視点で捉えると整理できます。((国内政治と国際政治という2つのレイヤーで駆け引きが行われることを想定している。
2レベルゲームについて―国際間交渉と国内の意思決定過程の相互関係―米崎克彦https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/16508/034063030002.pdf))。

中国は国内を強い政府の力でコントロールできます。米国は国内に多様な意見があるため政府の力でコントロールできる範囲に限界があります。すると、国際政治における交渉において中国は米国に対して弱い立場におかれると考えられます。

なぜなら中国政府は自身の決定を国内に強制することが出来る反面、米国では交渉に失敗した場合その決定を国内に受け入れさせることが難しいからです。ただ、この議論前提には互いが同程度のパワーを持つ国であることが暗黙のうちに規定されていると思います。

つまり、米国と中国が同じくらいのパワーを持っているとしても、中国政府は自身が活用してきたコントロールシステムが仇となって、有効な反論ができなくなります。米国との対立は中国が完全に米国の影響下に置かれない限りますます深まると考えられますが、現時点では圧倒的に米国優位にあるという状況なので、中国は今後も苦汁を飲まされるのでしょう。

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