財務・会計

【ビジネスの基礎】会計とファイナンスの違いを整理する

会計とファイナンスは同じ「お金」の管理に使われるものさしです。

結論から言えば、会計は「お金の記録方法」を指しており、ファイナンスは「未来のお金の検討方法」を指していると言えます。

更に詳しく会計とファイナンスの言葉の定義について説明する前に、そもそも会社の「存在」について考えたことはありますか?

会社は何のために、どうやって存続していくのか

会社は「法人」と呼ばれていますが、その名の通り法律に基づいた「人」です。

人は生まれてから時間が経つと死んでしまいますが、法人はあくまで仮想的な人です。
なので、存続することができれば何百年も生きながらえることができます。

人が食べ物から栄養をとって生きているのと比較すると、
法人はお金から栄養を取って生きていきます

もちろん、創業者や起業家が亡くなったあとに法人もその寿命を終えることがありますが、跡継ぎや買収などを通して、他の人が意思を受け継いで継続的に事業を行っていくことができるのです。

松下幸之助が亡くなったあとも豊田佐吉が亡くなったあとも、岩崎弥太郎が亡くなったあともそれぞれの会社は事業分野を広げたり、変えたり、新しい会社を作ったりしながら、法人として現在も存在しています。

会社の栄養である「お金」がどのくらいあるのかを知らずに生きていくことはできません。
だから、そのお金を毎日、もしくは毎月、正しく会社内に取り込まれているのか、そしてどのくらい取り込まれているのかを把握することが必要なのです。

そのためにはどのような活動が必要でしょうか?
「お金」という視点から見れば、会社がやるべき仕事は3つに集約されます。

  1. これまで実施してきた事業の成果を評価すること
  2. これから稼ぐであろうお金を計算すること
  3. 将来のために投資するお金を用意すること

①と②で用いられる「お金」の記録の仕方を「会計」といいます。
③で用いられる「お金」の考え方を「ファイナンス」といいます。

基本的には会計が「過去のお金」の動きやストックを記録したものなのに対して、
ファイナンスは「将来のお金」の動き、会社を成長させるためのお金の用意方法についてあれこれと検討する活動であると言えます。

「これから稼ぐであろうお金を計算する」という言い方はとても曖昧ですが、四半期決算や来年度の収益予想などはファイナンスではなく会計が扱う分野です。

実際は会計とファイナンスは重なるところもあるのですが、②の場合は、あくまで将来の予想を立てて、会社の業績を監視したり、来年度の数字について投資家に説明したりするために作成する数字であって、会社のさらなる成長のための活動ではないことからここでは「会計」としたいと思います。

「会計」は大きく3つのお金の数え方で分けることができる

それではまずは「会計」についてより深く学んでいきましょう。

「会計」と言われる考え方の中にも、大きく3つの考え方があります。

  1. 事業がどれくらいの成果を出したのかを正しく測る
  2. 正確な税金を支払うために正しく測る
  3. 投資家への説明をするために正しく測る

それぞれ、「管理会計、「税務会計」、「財務会計」といいます。

  • どれくらいの成果を出したか自分たちが確認する→管理会計
  • 正確な税額を支払うために計算する→税務会計
  • 投資家に説明するために計算する→財務会計

どんな企業も税金は支払わなくてはならないため「税務会計」は行っています。
ただ、中小企業では財務会計や管理会計にはそこまで力を入れていないところが多いです。

しかし会社の実力を正確に知り、原価を低減したり、どれくらい利益を出さなければ将来に備えられないのかを見積もるためにはより細かく分析できる「管理会計」が必要ですし、将来的に上場を検討したり、銀行から追加の融資をうけるというのであれば「財務会計」が必要になります。

企業を成長させるには、最終的にはこれら3つの会計がすべて行われる必要があります。

ファイナンスとは一般的には企業の財務活動を指している

このファイナンスは「コーポレート・ファイナンス」の略語としてのファイナンスです。

ファイナンスという単語自体は個人の金融から、消費者金融会社、そして財務省まで、お金に関わる様々な事柄を指しているので定義がぼんやりしがちですが、ここでは企業の財務活動としてのファイナンスを指します。

この会社が「将来のための投資するお金を用意する」ことをファイナンスと定義しましたが、実際にこのファイナンス活動を行うためには、以下のことを検討する必要があります。

  1. どのくらいの金額が必要なのか
  2. 外部から調達する際はどう組み合わせたら最適なのか
  3. 既存の事業から資金を捻出することはできるか
  4. これらの意思決定の合理性をステークホルダーに説明できるか

まず、会社の目的を達成するためにどういった活動を行うのかという戦略が立てられます。
すると、その活動を遂行するためにどれくらいの資金が必要なのかを検討します。

資金の額が決まれば、どのように調達するのが最も良いのかを検討します。
できるだけ資金調達のコストが安く、経営に対するリスクが低い方法を選ぶはずです。

もしかすると社内で自由に使える資金がある可能性もありますし、既存の事業から将来的にお金が継続的に生まれるのであれば、それを元手にすることもできます。

最後にこれらの意思決定の経緯をステークホルダーに説明し、納得してもらえるかを検討しなければなりません。例えば、自分たちは低金利で資金を調達したいと考えて計画しても、市場でその条件を飲んでくれなければ調達は失敗してしまいます。

第三者割当増資などの新しい株主に株券を与えることでその対価として資金を調達する方法もあります。ただし、こうした調達方法は経営の支配権という視点から見れば、外部の人にある程度のコントロールをされる可能性があることを指しています。

この記事では多くは触れませんが、こうしたいろいろなシナリオを検討し、ステークホルダーの合意を得なければ会社として行動することはできませんのでとても重要です。

会計の知識をもとにファイナンスが行われる

銀行員はファイナンスの専門家なの?
答えはYESでありNOだな

同じく、会計士や税理士はファイナンスの専門家だと言えるかと言えば、同様に答えはYESでありNOであると言えます。

ファイナンスは財務と翻訳されることがありますし、資金を調達するといえば一般的には金融機関からの借り入れを指すことが多いかもしれません。

しかし、今回取り上げたコーポレート・ファイナンスの活動は単なる借り入れ以外の選択肢を持っていますし、実際のファイナンスではあくまで「会社を成長させる」という視点のもとに、様々な検討をする必要があります。

よって、銀行員はファイナンスの一部しか知らないですし、会計士もまたあくまで監査や会計のアドバイザーとしての専門知識としての会計に詳しいのであって、必ずしもその知識は会社の成長を目的にしたものではありません。

それはたとえ、会計士としてIPO支援をしていても同じです。

確かにベンチャー企業の会計を監査して、上場のために「財務会計」を行うための社内プロセスを検討したり、不足している点を指摘したりすることには長けていますが、必ずしも事業モデルを理解した上で、会社に合わせたファイナンスができるとは限りません。

会計とファイナンスの違い|まとめ

会社の本質を突き詰めると会社にとってすべきことは「永続的に社会の役に立つことでお金を生み出し続けること」です。

会計は正しい「お金」の使い方をしているのか、成績はどうなのかを確認して、管理を行ったり、税金を正しく支払ったり、投資家に説明するためにどの会社も同じ基準で計算したりするためのツールと言えます。

ファイナンスは、会社の発展のために「どうやってお金を集めればいいか」を考えることを指しています。そのために会計の知識も必要ではあるけれども、あくまでそれはファイナンスの一部であって、会社にとってベストの選択肢を検討するためのツールをひっくるめてファイナンスと呼んでいると考えられます。

使う人によってその見方が違いますが、ひとまずは冒頭に書いた通りの「会計は「お金の記録方法」を指しており、ファイナンスは「未来のお金の検討方法」を指している」という見方をご納得いただけましたでしょうか。

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