起業

2018年6月に起業した自分が半年後、反省を込めて振り返る

良かったこと・楽しいこと

起業すると先輩起業家を含めて色んな人が応援してくれる

ビジネスプランを周囲に話しても成功するかはわかりません。しかし、その人が将来のユーザーであるならば真剣に議論しましょう。

起業のために一日の大半を費やすのは孤独ですし、時に自分の無力さを感じることもあります。それでも、度々応援してくれる人に出会い、激励の言葉や厳しい意見を言ってもらえた時に、価値の創造に全力で打ち込める環境のありがたみを感じます。

なにも起業しなくても良いかもしれません。お金を稼ぐだけなら副業していたほうがいい。でも、その活動やビジョンについてどんな形でもいいから人から応援してもらえる活動をしている人は起業家になるべきだと思うようになりました。

何かの課題の解決策を練って、実現のために悩んだり、自分から動いたり、人を口説いたりするような活動に取り組んでいる人は立派な起業家です。

それが経済的に成功することや社会に大きな印象や影響を与えられるかどうかは、確かに経営者としての評価にはなりますが、一番は人から応援してもらえる夢を持ち続けて、行動することだと思います。

ビジネススキームさえ固まれば最初の調達に困ることはない

ベンチャーキャピタルから資金調達したいのであれば、ベンチャーキャピタルが好みそうなビジネス分野、テクノロジーを用いたビジネスモデルが必要です。最も重要なのは市場規模とタイミングです。

資金調達をすることはまず会社の生存期間が伸びるということ、そしてもう一つが、有望なベンチャー企業としてのシグナリング効果があります。

しかし、それは必ずしも倒産確率が少ないことを意味しません。多くの場合VCは投資チャンスを逃すことを避けるために流行りの技術や分野にとりくむ企業に投資したがります。でもそれは投資ポートフォリオのうちの1社としてキープするためです。

プロダクトマーケットフィット(PMF)の検証がバイアスのかかったものであったり、流行の勢いだけで進む企業もたくさんあることは、シリコンバレーの歴史が証明しています。

決して資金調達をすることが目的ではないはずです。資金調達するには調達がしやすい分野があるのは事実です。だから、その流れが自らが考えていたものと近いのであればその流れに乗れれば最高です。

逆に「今はこれが流行っているけれど、自分は逆張りでこう考えている」というアイデアがあるならば、今は資金的に苦しくてもそれを徹底して実行して着実にユーザーを増やしていき、流れが来た時に乗る。それまではじっくりと機が熟すのを待つのも手かもしれません。

アーティスト・スカラー・アントレプレナー

本当にビジネスには答えがないのだと実感しました。

それは辛いことのようにも見えますが、何を、どこで、誰が、どうやって売るのかを全て試すことができて、かつ時代という不可逆的な流れとライバルによって一時的な最適解すら変化してしまう。

こんな感覚が手に取るように感じられたのは幸せかもしれないと思っています。

すると、ビジネスの成功は運なのかというとそうでは決してないのです。予想を立てることができるのです。一番の答えはユーザーが明示的・非明示的に持っています。

予想は外れることもありますが、式を立てて変数を埋めることでシミュレーションはできます。このシミュレーションの重要性はビジネスにおいては「人を納得させること」にあります。

これによって何もかもどうなるかわからないビジネスの世界であっても、ユーザーが購入してくれたり、会社運営のための資金を手に入れたりすることができるのです。

自分はアーティストとして音楽活動をしています。そしてかつては研究者になることも志したことがあります。

誰も未だ知らないことを作り上げていくプロセスは、すなわち論文の査読者を論理や証拠を持って納得させたり、自分にしかできない表現で受け手の心を動かしたりするみたいだと感じています。

アーティスト・スカラー・アントレプレナー。この3つの職業はまるで違った方向を向いていますが、全てにおいて完成に向けて自分を客観視させる仕事に取り組むことができるという点においては同じように思います。

悪かったこと・苦しかったこと

最初に考えていたプランはほぼ失敗するということ

意気揚々とスタートしたけれど、順調に思ったとおりに進むことは一つもなかったです。自分が最初に計画していたプロダクトも実現できなかったです。

起業した時に自分の思ったとおりに物事が進むことはまずない。

そう、頭では分かっていても「自分は成功する」と思い込んでしまいます。リーン・スタートアップの方法論に基づいてアイデアをブラッシュアップしても、それを本当に成功する形にまで磨けるほどうまく活用できていないことがあります。

インタビュー一つをとっても自分が正しいと信じるバイアスが掛かっていたり、こちらの気持ちを慮ってくれる優しい方だと、直感的な意見は言ってくれなかったりします。

胆力が必要だということ

「決める」というリーダーとして最も重要なことを強く意識すべきだと実感しました。

弱い自分が前に進むためにはまずは格好だけでもリーダーになりきること。たとえそれが皆に笑われるような道化師だったとしても、踊り切る強い意思がアントレプレナーには必要だと体で学びました。

起業家を目指す人に伝えたいこと

登記することでは何も産まないが、形があったほうが良い

自分が少し失敗してしまった点として、起業してすぐ法人登記をしなかったことです。

自分は恵まれた環境を提供いただいたので、事業開発に専念してブーストを掛ける段階で法人登記をすればいいと考えていました。しかし、世の中、形がなければ信用もないのです。

実は、多くの補助金や競争的資金は法人登記されていることが前提となっており、1年以上の営業活動を行っている必要があるものも多くありました。資金のもとが税金から出ているために「何にどれくらいお金が使われたか」を把握する必要があるからです。

従って、補助金を受けたい場合は最低でも個人事業主として登録しておく必要がありますし、多くの自治体では法人しか申請することができません。

故に、形だけでも良いので法人を作っておくことをおすすめします。法人登記をしたところで事業がうまくいくかどうかはわかりませんが、そんなことは最初から考えるべきではありませんよね。

ぜひ皆さんには最初から法人を立てて「われこそが企業経営者である!」というアントレプレナーらしい気持ちで法人を作り、クレジットヒストリーならぬ「カンパニーヒストリー」を刻んでほしいと思っています。

究極的には自分がやらないとよくわからない

どんなに経営企画をしていても、ベンチャー企業で働いていても、新事業創出に携わっていても、自分一人で初めて社長として采配を振るのと、それ以外では全く経験が異なると実感しました。

どんなに本を読んだり、この記事を読んだりしても、意味はあるでしょうが実感して腑に落ちることはまずありません。なので、自分が目指しているゴールを踏まえて計画を立てて、動き出すことがなにより重要です。

起業することが目標になると、先を歩く経営者であれば盲目的に言うことを信じたりしてしまいがちですが、多くの経営者の方とお話する中で気づいたことが3つあります。

  1. 創業社長とその他の社長では全く異なる
  2. 独立とベンチャー起業では全く異なる
  3. 取り組むビジネスや時代によって全く異なる

経営者には大企業の社長もいれば、個人開業している人もいます。ベンチャーキャピタルから出資を受けてる起業家もいれば、借入だけで上場させている起業家もいます。そして、これらの人が言うことはまるで違います。

なので、人の意見を聞くのは勉強にはなるのですが、自分で考えて検証することが最も成功に近いのだと感じています。

おそらく、この記事を読んでいる人が目指している形はベンチャー企業でしょう。株式会社という形を取らなくても規模を拡大させてより大きなミッションに取り組む組織をつくることを志向した組織をつくることを目標にしているはずです。

そうした会社であっても当然最初は小さい組織から始まり、次第に人員が増えて大きくなっていきます。ただ、今その過程を先回りして知る必要はありません。

今やるべきこと、それはひたすらにビジョンを追い求めて、仲間を募り、資金を集めて、行動することただ一つです。他の人がやらなければ自分がやるんだと強い思いをメラメラと燃やし続けることだけなのかもしれません。

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