最近海外の大学院を卒業して最先端の経営学を日本で教えている先生が増えた気がします。
しかしながら日本ではいったいどんな雑誌が一流紙と呼ばれているのか、現在の研究主流はどんな研究なのか知っている人はあまり多くないでしょう。そこで、学術誌の評価を見ることができる「2012 JCR Social Science Edition」を使い研究者の間で影響度の高い雑誌を調べてみることにしました。
今回はインパクト・ファクターではなくアイゲン・ファクター(EF)*1の高い順に10誌並べてみました。
EF順位 | 雑誌名 | Impact Factor | Article Influence Score |
---|---|---|---|
1 | Academy of Management Review (AMR) | 7.895 | 6.229 |
2 | Administrative Science Quarterly | 4.182 | 5.593 |
3 | Academy of Management Journal (AMJ) | 5.906 | 5.573 |
4 | Journal of Management | 6.704 | 4.069 |
5 | Strategic Management Journal | 3.367 | 3.128 |
6 | Journal of Marketing | 3.368 | 2.616 |
7 | Strategic Organization | 1.769 | 2.444 |
8 | Journal of Marketing Research | 2.254 | 2.328 |
9 | Journal of Consumer Research(JCR) | 3.542 | 2.214 |
10 | Journal of Organizational Behavior | 3.626 | 2.086 |
インパクト・ファクターのトップ10ではランクインしていたManagement Decision誌やInternational Entrepreneurship and Management Journal誌、Long Range Planning (LRP) 誌、Journal of Management Studies誌はランク外になってしまいました。
今回はアイゲン・ファクター*2を使ってみましたが、私の所属する分野では雑誌の影響力を測る基準としてはインパクト・ファクターが主流です。隣接する理工系の分野でもこの傾向は同じだそうです。教授はインパクト・ファクターの高い雑誌に乗せたがりますし、教授の業績評価もインパクト・ファクターが重要だそうです。
アイゲン・ファクターは基本的には「引用が多い雑誌ほどその分野における影響度が高い」という仮定に基づいています。従来のインパクト・ファクターが「2年間の掲載論文数÷その翌年の引用数」で計算されるため掲載論文がすくない雑誌ほどインパクト・ファクターが高くなりがちであることから、分野全体への影響度を過小評価しているのではないかという批判から生まれたものです。
社会科学系の分野では数十年前の論文でも比較的新しいものであるとされ*3、数年以内に論文が引用されることが多くないのでインパクト・ファクターは低くなりがちですが、経営学は比較的最近の論文の引用数が多い分野であることが分かりました*4
マーケティングなどは実務に近く最先端の心理学や認知科学が応用されています*5ので、学術分野におけるマーケティング研究などにもがぜん興味が湧きます。このランキングはあくまで一流誌とされる有名雑誌を並べたものですので、一つ一つの論文の質は担保してませんが、今経営学分野ではどういったものが主流なのかをつかむには参考にして斜め読みしてみる価値はあると思います。
*1:Article Influence ScoreはEigenfactorを全対象雑誌の掲載論文に占めるその雑誌の掲載論文の数)で割ることによって算出される。1を超えれば平均よりも高い影響力を持つ。
*2:インパクト・ファクターおよび、アイゲン・ファクターについては以下のサイトが参考になります。アイゲンファクター http://ja.brc.riken.jp/lab/info/bibliometrics/eigenfactor.html インパクトファクター、アイゲンファクター覚書 – Mr_YMのちょっとだけ研究日誌 – そんな博士の一日 http://hakase.g.hatena.ne.jp/Mr_YM/20090621/1245576141
*3:ゲーム理論など比較的新しいとされる分野においてもNeumann, J. V. “Zur theorie der gesellschaftsspiele.” Mathematische Annalen 100.1 (1928): 295-320.など100年前の論文が引用される事がある
*4:経営学分野のインパクト・ファクター10位であるJournal of Consumer Research誌のインパクト・ファクターは3.542、政治学分野のインパクト・ファクター10位のPerspectives on Politics誌はI/F1.963です。
*5:ビービットの考え方|ウェブコンサルティングのビービット http://www.bebit.co.jp/about/ucd.html