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放送大学の「初歩からの物理」が目からうろこ

物理は科学の考え方の基本で何でも扱う学問

物理的なものの見方ができればより視点が広がると思った

自分は物理を勉強しませんでした。化学と生物だけしか勉強してないんですよね。

それでも高校生の頃から統計分析ソフトを使ってましたし、エージェント・ベース・モデルや統計学、数理モデルを使った研究をしようと思ったので、いろいろなツールの使い方を覚えました。

文系的に「あ、もう結構です」というような数式や図式に慣れてきた方ではあります。

それでも物理というそのものに向き合ったことが無かったので、サイモン・シンを読んでも科学者たちは「何に突き動されているか」を十分に理解する、共感することはできなかったような気がします。

早速初回の講義を見てみましたが「物理とは何か?」という答えに明確な回答を与えてくれました。

物理というのは「みて、測る」学問です。つまり「実験して計測する」。

これというのは近代の「科学的思考」とイコールなんです。

これを聞いて、自分を振り返ってみたときに、確かに自分は確かになんとかというコンピューター言語やなんとかというソフトウエアを使ってきましたが、それはツールであって思考ではないんですよね。

「なんでそれを疑問に思ったのか?」

「どうしてその方法で答えがわかるのか?」

自分はそれなりに考えたつもりでしたが全く考えてませんでした。

それは自分が社会科学を学んだからとか、数学が苦手だからとかそういう理由ではなく、単純に疑問を追求する力がかけていたんですよね。

そして、その疑問がブレブレだからその検証方法もブレていたんだと思います。

なぜそれがぶれていたかと言うと考え抜く力が無かったからですが、一通りやってみて自由にしている今だからこそ「人にこう思われたい」とか「これをやれば評価される」とかそういうものを抜きにして自分の問いというのを追求する時期にあるのかなと思ってます。

物理は自然全般だから適用範囲は広い

物理というのは広いんですよね。応用数学があるように応用物理があって、もはやその対象って材料工学とか電気工学や電子工学と重複するように思えます。

これは当たり前の話ですよね。どれも物理現象を扱っているわけですから。

工学系にはよくあることなんですけれども、今回の物理はあくまで純粋な物理学を学習することにあります。その美しさ、面白さが自分もわかるといいなあと思ってます

そういえば、この前の花見でも大学院の先輩が言ってた「情報科学と情報工学の違いは、数式を美しいと思うか、動かして役立つものを作るかなんですよ」という言葉が耳に残ってます。

昔組んでいたバンドでも物理専攻のやつが「難しいものを数学無しで簡単に表現するのは難しい」と言った、その言葉だけ覚えています。

まあこの「基礎からの物理」では数学ほとんどなしで物理の面白さを教えてくれますけど。

独学ではなく放送大学の授業を選んだ理由

特に理由はないのですが、心理学を放送大学で学んでいたからです。
今期は気分を変えて物理と化学と哲学を学ぶことにしています。

放送大学は講師陣のレベルが高い

また「放送大学はレベルが低い」という人がたまにいますが、
個人的にはものすごく高いと思ってます。

まず講師陣がすばらしいです。

今期の担当は米屋民明先生と岸根順一郎先生です。ちなみに米屋先生は素粒子論、岸根先生は物性のご専門です。

お二方とも日本学術振興会の専門委員のご経験があります。これは自分から挙手するものではないので、その業界でどれくらい「この人は研究について良い目」を持っていると周りの人が見ているかが基準になります。

専門委員というのはその分野で「次に研究すべき」研究を見定める仕事でもありますから、その分野の今後をある意味で左右するわけです。

こうした一線の先生方に教わることができるというのは素晴らしい

一線の講師陣だからこそ物理の本質を伝えてくれる

講師が良いというのは単純にわかりやすいというだけでなないです。

何を持ってわかりやすかったのか。それは受験に合格するという意味でなのか、それとも物理の本質を掴む考え方を示唆するという意味なのかによってその方法は違ってきます。

放送大学の目指しているところは後者です。いわゆる知的好奇心です。この意味において「良い先生」、本質を掴んでわかりやすく教えるのがうまいのは、その学問の面白さを分かっている人です。

博士とって研究している人も自分がなんとなく頭いいからやってるだけという場合もあります。研究を追求した人にしか見えない本質の掴み方が教材に反映されてるのがわかります。

講義のタイトルだけ一見すると「初歩からの物理」というとまあ大学入門レベル、高校生くらいの物理という感覚を持ちますが、内容的にそのレベルではないです。

ガリレオ・ニュートン力学から始まって素粒子論まで行きますからエッセンスが詰まってなければ終わりません。まず、初回で普通高校物理で最初から普遍定数G, c, kB, hを示すことなんてしませんよね。

物理学の基本公式を覚えろというのではなく、物理学者の信念やその意味や物理に与えた影響について解説してくれるんです。

物理学が成立することによって、すべてのものの見方は観察者の主観であったものが、「みて、測る」ことをすることで客観的で普遍的なものが定義できるようになったんです。

そんなことは意外と考えたことが無かったのではないでしょうか?

今、いろいろなものが設計されて作られるのも物理という基盤があったからこそ、人間が直感ではできないようなことができるようになったんだと実感します。

そういう感覚がまた面白さ、勉強の深みを出していくと思います。

数学への苦手意識で物理の面白さが伝わらないのはもったいない

「複雑なものを数学無しで簡単に表現するのは難しい」と言ったのはバンドを一緒に組んでいたギタリストの言葉ですが、自分はどうしても数学に苦手意識があります。

そういう人は少なくないわけで、「なんでわからないの?」とか言われてもわかりません。

しかし、放送大学の講師陣だと物理を極めてますから、数学が物理の面白さの本質ではないことくらい分かっているんですよね。

物理が知りたいのは「自然」であって数学問題を解くことではないのです。

ただ、一方で物理と数学は切り離せない関係にもあります。物理が第1回は「自然現象を物理的にとらえよう」においてポアンカレの言葉を引いています。

すべての法則は実験から引き出される。しかし、この法則を記述するのには特別な言語を必要とする。日常の言語はあまりに貧弱であり、それにかくも微妙かくも豊富で、しかも各も精密な関係を表現するのには、あまりに曖昧でありすぎるのである。

これが、すなわち、物理学者が数学なしに済まし得ない一つの理由であって、数学は物理学者が話しうる唯一の言語を物理学者に提供するのである。

「結局数学からは逃れられないのかよ!」

とお怒りになる前に、講義は中学2,3年生レベルの数学でついてこれるように設計されているというのです。

抽象的な概念を理解するのはとても難しいです。しかし、実はその考えを築いた科学者にはなんらかの信念があったわけです。それが見えると、自分はたとえ同じことはできないにしても、その面白さはなんとなくわかるんではないでしょうか。

とにかく、考えるなら放送大学はおすすめですね。今期は物理と化学と哲学やります。

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