財務・会計

【判断に迷わない】税務における印紙税の実務早わかり!

印紙税って判断に迷うことが多いよね。

個人事業主やサラリーマン、起業家まで全員一度は見たことがある印紙(収入印紙)、
契約書や領収書、注文請書など金額が明記されている「書類」に必要な税金です。

そうは言っても日々ビジネスをしていると実務上、印紙税についてはしっかりと、
判断の上納付しなければなりませんので今回は簡単に判断する方法についてご紹介します。

まずは国税庁の印紙税課税文書に該当するかどうかの判断基準

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。
この課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。

  1. 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
  2. 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
  3. 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。

①については「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」において列挙されています。

②については契約書上に金額記載の有無を問わず、
文書に取引金額そのものの記載はなくても単価、数量、記号等により、
当事者間において取引金額が計算できる場合はそれを記載金額とするとしています。

また、請求書に「済」や「了」と表示してあり、
その「済」や「了」の表示が売掛金を領収したことの当事者間の了解事項であれば、
その文書は、売上代金の受領書(第17号の1文書)に該当するなど実質判断がされます。

③についてはビジネス契約において、一般的には関係がないので省略します。
詳しくはこちら

仕事の完成を対価にする場合は基本的に請負契約となり印紙が必要

「請負契約」という言葉のイメージはどのようなものがありますか?

誰かから仕事をもらって汗をかいて仕事をするイメージでしょうか?

確かに請負というと作業を請け負うというイメージがありますが、
実は請負は「当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、
他方(注文者)が仕事の完成に対する報酬を支払うことを約する契約」
です。

つまり、請負という契約をするとき作業を完成させることが求められているのです。

国税庁のWebページでは「工事請負契約」「加工注文契約」「作業請負契約」
「広告契約」「俳優専属契約」等が例として挙げられてます。
どんな契約の名称だろうが「仕事の完成を約束し完成に対する対価を支払えば請負」です。

請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの、
役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれます。

こうした請負契約に関する契約書を税法では「4号文書」と規定しています。

1万円未満 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7102.htm

継続的取引の基本契約書の印紙は4千円で固定されています

印紙税法において、4号文書の他に「7号文書」という言葉を、
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

はじめての契約先と基本契約書を交わすときに使うよね。

そのようなケースが多いですね。
「継続的取引の基本契約書」というのはよくある「基本契約書」に該当します。
こうした、継続的取引の基本契約書については印紙税は4千円となります。

多くの場合、基本契約書は継続した取引で毎回契約書をすべて交わすのは手間も、
労力もかかることからある程度変わらない条項については基本契約書として、
別途、新しい業務が発生した際に発注書や注文書を出すことで依頼するケースが多いです。

例えば「売買取引基本契約書」「特約店契約書」「代理店契約書」、
「業務委託基本契約書」「銀行取引約定書」などが該当します。

委任契約や準委任契約については印紙が不要です

法律行為(民法643条)や事務を依頼する準委任契約(民法656条)については、
収入印紙は不要
となります。

請負契約か委任契約かというのは、民法上は仕事の完成責任を負うか否かで判断されます。

請負の場合は完成するまで責任を全うする必要がありますが、
委任の場合は善管注意義務を果たしていれば事務の処理を遂行すれば良いのです。

しかし、税法上は役務提供取引についても請負契約として判断されます。
請負契約か委任契約(準委任契約)かというのは大きな意味を持たないと言えます。

「業務委託契約書」に基づいて行う業務は非常に曖昧ですが、開発業務であったり、
制作業務、納入業務である場合は請負業務を行い、成果を納入するということになります。

請負とは当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がこれに報酬を支払うことを約束することによって成立する契約をいいます。請負には建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするものも含まれます。
具体的には、工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、会計監査契約書などが請負に関する契約書に該当します。

タックスアンサーNo.7192 請負に関する契約書
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7102.htm

民法上はヘルプデスク業務や技術指導、要件定義、顧問業務である場合は、
委任契約(準委任契約)と判断されますので印紙税は不要という判断になりますが、
ビジネスの実務では請負・委任どちらの要素もあると考えられる、
「混合契約」である事が多く印紙を貼ることでリスクを回避している企業が多いようです。

コンサルティング業務に関する契約書には印紙が必要?

経営のコンサルティング業務を提供する会社ですが、契約書に印紙は必要でしょうか。

委任・準委任契約(法行為を委任者が受任者に委託する行為、知識や経験に基づき業務を委託する行為)の場合、印紙税は不課税です。

しかし、現実的にはコンサルティングファーム等で受託するコンサルティング業務の多くは、最終報告会等を通してレポートや報告書を納品することがあります。

契約書の中に「成果物の提供を契約終了の要件とする」ことが明記されている場合は当然に請負契約と判断されます。

よって「コンサルティング業務だから準委任契約である」という論理は実態にそぐわず、成果物の提供を行う場合、請負という要素が無いということは言えない場合があります。

実際に前職の大手会計事務所でも「コンサルティングサービス」を提供してはいましたが、
契約書に最終報告会および報告書として成果物の明記がなされていることから、
印紙税の添付をしておりました。

M&Aや業務提携等の「アドバイザリーサービス」に関しても報告書の提供が、
最終納品物として事前に契約書に明記されている場合があります。
その場合は、提供するサービス名に関わらず請負契約として判断すべきです。

印紙税を節約することはできるの?

社長が印紙税を節約しろと言ってきます

印紙税については契約の形態によって印紙代が定められていますので、
契約書を紙で作る必要がある際は、継続的取引の基本契約書や請負業務が発生するならば、
それぞれ、4千円と金額に応じた印紙をはらなければなりません

でも、契約書は必ずしも紙で行う必要はありません。
電子契約に基づく契約書も、当然に民法上有効です。

クラウドサインAdobe Signなども電子契約が簡単にできるサービスです。
印紙や契約書作成の手間を省くこともできるので一石二鳥ですね。

システム開発業務やコンサルティング業務は、
多くの場合、請負契約と委任契約が混合する「混合契約」であることが多いです。

上流工程や技術顧問など成果物が知識や経験に基づくものについては、
契約書に成果物としての報告書等が明記されていない場合に限って、
印紙を添付しなくても良いと考えられます。

しかし、プログラミング・コーディングなど手を動かす開発業務については、
実質的に成果物としてのコードが納入されることになりますので請負契約となります。

委任契約の要素があるにしても、税務実務としては混合契約として考えられるため、
結果的に請負契約としての印紙を添付することになるのです。

ビジネス実務における印紙税のまとめ

印紙税はビジネスでの契約書を取り交わす際に避けては通れない問題です。

実務では明確に委任契約と請負契約と区別できる場合を除き、判断が極めて難しいため、
印紙税を納付することで不必要な税務リスクを負わないのが良いです。

過去の判例で、清掃業務は準委任契約と判断されていますが、
国税庁のタックスアンサーでは警備、機械保守、清掃になど役務提供についても、
「無形的な結果を目的とするもの」として請負に関する契約書に該当するとしています。

また、プロ野球選手や俳優等も一見すると必ずしも
「仕事の完成を対価に報酬を支払う」ようには捉えられませんが、
税務実務においてはこうした専属契約書についても請負に関する契約書として、
印紙税の課税文書となる旨が記載されています。

明らかに国税庁の例示する課税文書に該当する場合は当然印紙が必要ですが、
それ以外のケースでは自社の法務部の判断や弁護士、
税理士の見解を総合的に判断する必要がある場合があります。

ただし、根本からひっくり返すようですが、おすすめしたいのは社内のデジタル化です。
契約書や注文請書等も電子化することで印紙税は不要になります。

それだけでなく、社内や取引先とのデジタル化を進めることによって効率が上がり、
社員の士気も上がり、おまけに印紙税判断や不必要な課税リスク等厄介な悩みも減ります。
今すぐにすべての会社がこうした施策を早く進めてほしいなと願っています。