キャリア

良く生きることは生存戦略だ

年寄りの知恵と「補償を伴う選択的最適化戦略」

普段、自分の生き方を意識して振り返ることは多くないと思います。

それでも毎日過ごしていると「あれ、これできた!」とか「あれ、忘れてしまったな」とかいろいろな変化が起こっているはずで、その延長線上に今自分ができることやできないことがあるというわけです。

若い頃は齢を重ねるにつれて出来ることが増えていく一方でしたが、ある程度齢を取っていくとできなくなることもまた増えていきます。私も曲りなりにスポーツをしてきましたが、ここ数年激しい運動のあとの膝痛に悩まされています。

しかし、「もう若くない」ということを受け入れた今では限界以上に激しい運動をしないように心がけ、ヨガやストレッチなどの軽度の運動を意識して増やすことで身体を整えるようにしてます。

発達心理学を研究するポール・バルテスは、加齢による能力の低下に適応させていくノウハウとして対処方法を生み出していく高齢者の様子を「補償を伴う選択的最適化(SOC方略)」として提唱しています。1)Baltes, Paul B., and Margret M. Baltes. “Psychological perspectives on successful aging: The model of selective optimization with compensation.” Successful aging: Perspectives from the behavioral sciences 1.1 (1990): 1-34.

80歳でもなお驚異的な演奏活動をしていたル―ビンシュタインは、その秘訣についてインタビューされた際、演奏レパートリーを減らし(=選択)、そのレパートリーだけを徹底して練習し(=最適化)、テンポの速いフレーズはゆっくり弾いてテクニックが衰えていない印象を与える(=補償)ことだと答えたといいます。

一見、難しいことを論じているようですが、「齢を重ねるにつれて衰えるだけではなく能力を最適化しているよ」ということです。

これ、あくまで発達心理学で高齢者の心理学として提唱されているものですが、決して高齢者だけのものではないと思うのです。

自分の能力をどう活かしたら最も自己実現、幸せに近づけるのかと考えたときに変に肩肘張らずに、生き抜くにはどうすべきか、自分のことをよく知って、楽しく生きる方法を自分で考えた人が結局は幸せだし、人生の勝者になるんだと思います

お年寄りの知恵というものだよな
生活全体を見たときの様々な機能低下には、みんなでフォローする仕組みがないといけないね

ベネッセという名前の由来

「こどもチャレンジ」や「たまごクラブ・ひよこクラブ」で有名なベネッセという企業の名前の由来は「良く生きる」という造語から来ています。

ラテン語の「bene(よく)」+「esse(生きる)」を語源にした造語。

この意味を知ったのは、大学生くらいだったと思いますが、今でもしっかり心に残っているくらい良い印象を持ちました。「良く生きる」。一見するとあまり意味がわからないですが、普段我々はなんとなく生きているようで、皆が共通して目指しているものがあります。

それは「幸せ」です。

普段意識しませんが、我々日本人が日常的な生活を送る前提として、日本国憲法第13条には「幸福追求権」について規定されています。

第13条 個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

生きるにあたって、幸せを追求することは人としての権利であるという主張はロックやバージニア権利章典の中に見受けらるとされていますが、中でも有名なものが「アメリカ独立宣言」で、この中には「Life, Liberty and the pursuit of Hapiness」という一文です。

この幸福追求の権利においては財産が最もわかりやすい幸福の源になるでしょう。財産というのはお金だけではなく、土地や自然、家族など自分が生きる上で価値を感じるすべてのものを指していると考えます。

すなわち、自分が価値を感じる全てが財産であり、自然人としての権利の一つだと言えます。

さらにこの主張を拡張すれば、人間の幸せは今自分が手にしている財産だけではなく、自分が何かを選択できる権利でもあります。自分が学びたいときに学べること、自分が住みたいところに住めるということ、自分が働きたいところで働くことなどです。

日本国憲法第22条では、居住移転の自由として「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定されています。

学ぶということについても、日本国憲法第26条2項において「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」と規定されています。

これは義務なので、勉強したくない自由を阻害しているという主張も考えられますが、普通教育が国家の存立に必要であるということ、そして人格形成のために必要と考えられることから親権者は義務教育を受けさせる義務があります。

義務教育以降の高等教育については自由選択ですし、所得が低い家庭には奨学金制度などが用意されなければなりませんが、現代において高等教育を受けることは、国際社会の中で生き抜くためには必須です。

このような意味においても、人が幸せを追求するために選択できる権利が与えられ、それを実際に行える環境が整っていることは大切なことなのです。

「良く生きる」という言葉にはこんな背景があるのかなと考えています。

まとめ

ちょっと大きな話になってしまいましたが、「良く生きる」というのはすなわち、幸せを追求すること、それはすべてのひとが持っている権利であるということ。

そして自分の能力をどう活かしたら幸せに近づけるのかと考えたときに自分のことをよく知って、楽しく生きる方法を自分で考えた人が結局は人生の勝者になるんだということです。

自分がもっている力をどう活かすのか、それは自分でも気づいていないかも知れませんが、それを探し続けることは大切です。そのために勉強が必要であれば進んで学ぶことが必要ですが、何より自分が幸せだと感じること、興味を持ったことを追求できることが一番の幸せではないでしょうか。

参考   [ + ]

1. Baltes, Paul B., and Margret M. Baltes. “Psychological perspectives on successful aging: The model of selective optimization with compensation.” Successful aging: Perspectives from the behavioral sciences 1.1 (1990): 1-34.